ITシステム開発において見積りや準備を軽視すると、プロジェクトが混乱し、最悪の場合は失敗に終わることがあります。
「とりあえず開発を始める」ことでスピードアップが図れると思いきや、想定外の問題に直面している企業が多くみられます。

「とりあえず」後、プロジェクトの途中で要件変更が頻発し、開発費用が膨らんだり、スケジュールが大幅に遅延したり、品質不足となるケースは珍しくありません。
場合によっては、導入したシステムが現場で活用されず大きな損失を生むこともあります。

本記事では、事前の見積りや準備を怠った結果発生した具体的なトラブル事例を紹介しながら、そのリスクを解説します!

事例：小売業のECサイト開発プロジェクト

背景
ある小売企業がECサイトのリニューアルを計画し、外部の開発会社に依頼。
しかし、要件の整理や見積りの不足はあったものの外部の大手開発会社の経験や技術を盲目的に信じ、プロジェクトをスタートしてしまいました。

問題発生

• 当初の見積りは予算内だったが、途中で仕様変更が続出
• システム連携（在庫管理・決済システム）が複雑であることに気づかず、後から追加開発が必要に
• 開発工数が膨らみ、途中で止めることもできず、最終的に2.5倍までコストが増加

結果

✅ 予算を超過し、経営層の承認を得るのに時間がかかり、納期も大幅に遅延
✅ 想定外のコスト増で、追加開発を断念し、一部の機能を削減
✅ 結果的に使いにくいシステムになり、リニューアルの目的を一部達成できなかった

➡ 見切り発車せずに、事前に適切な要件整理や見積りを行い、開発範囲とコストを明確にしていれば、このような事態は防げたはずです。

事例：製造業の業務システム刷新プロジェクト

背景
製造業の企業が大規模な生産管理システムを刷新するためにプロジェクトを開始。
しかし、ユーザ要求を収束させないまま、開発手法としてスクラムを選択し、アーキテクチャの固定要件を明確化せずに開発を進めたことで、後に問題が発生しました。

問題発生

• 開発が始まった後に「この機能も追加してほしい」という要望が増加
• 外部システムとのデータ連携が想定以上に複雑で、主要機能（固定要件）の仕様変更が必要に
• スクラムでは様々な変更に対応できず開発チーム運営が破綻し、システムテストの段階で、基本機能のバグが多数発生し、修正に時間を取られた

結果

✅ 当初の納期（12ヶ月）を6ヶ月も超過し、実際のリリースは18ヶ月後に（開発完了は更に18ヶ月後）
✅ 既存システムのサポート終了時期に間に合わず、業務が一時停止するトラブル発生
✅ 開発チームの残業が常態化し、メンバーのモチベーションが低下

➡ 事前に業務フローの整理、プロダクト規模や特性にあった開発手法の選択、ユーザ要求の変動要件の切り分けができていれば、スケジュールの遅延を最小化できたと思われます。

事例：飲食チェーンのPOSシステム導入

背景
全国展開する飲食チェーンが、店舗業務の効率化とデータ活用を目的に新しいPOSシステムを導入。事前にUI/UX設計や一部の現場ヒアリングは実施していたものの、ハードウェアの互換性や店舗オペレーション全体への影響といったソフトウエア以外の要素に対する検討が不十分なまま開発が進められ、大きな問題を引き起こしました。

問題発生

• 実際の店舗オペレーションを考慮せずに設計され、店員が使いにくい画面仕様に
• 高機能な分析ツールを搭載したが、店舗スタッフの業務フローやスキルに合っておらず、現場では活用されなかった
• 既存のレジ端末との互換性を確認せず、運用開始後から混乱が生じた

結果
✅ 現場の混乱が続き、導入1ヶ月後に旧システムへ一時的に戻すことに
✅ システムの再設計と再開発に1年間を要し、追加コストが発生
✅ 現場からの不信感が高まり、IT部門の評価が大幅に低下

➡ 現場の状況を的確に把握し、システム設計時に運用全体を包括的に検討していれば、このようなトラブルは回避できたはずです。

これらの事例からも分かるように要求・プロダクト特性・環境・チームなどを体系的に考える事前の準備と見積もりを怠ると、プロジェクトは破綻しやすくなります。

🚨 コスト増加：追加開発や仕様変更により、予算が大幅にオーバーする
🚨 スケジュール遅延：要件変更やトラブル対応に時間がかかり、納期がずれる
🚨 品質低下：テスト不足や仕様ミスにより、使いづらいシステムになる
🚨 現場の混乱：業務に合わないシステムが導入され、現場の生産性が下がる

適切なIT見積りと事前準備を行うことで、以下のようなメリットが得られます。

✅ 予算・工数の最適化 → 過剰なコストや無駄な開発を防ぐ
✅ スケジュールの安定化 → 計画的な進行が可能になり、納期遅延を防ぐ
✅ 高品質なシステム開発 → 必要な機能を明確にし、ムダのない設計ができる
✅ 現場の満足度向上 → 実際の業務フローに沿ったシステムを導入できる

ITプロジェクトの成功は、「開発前の準備」で大きく成功確率を向上できます。
日本では米国と比較して品質がより重視されるため、小規模の開発でない限り「とりあえず開発を始める」のではなく、準備や見積もりを徹底することで、品質だけでなくコスト・納期を最適化し、確実に成功へと導くことができます。

ITシステム導入を検討されている方は、まずは適切な見積りと準備から始めてみませんか？