You are currently viewing 【WBSシリーズ③】WBSは“完成品”じゃなくていい?─シリーズ総まとめ:あいまいさを味方につける構造設計
  • 投稿カテゴリー:ブログ

【WBSシリーズ③】WBSは“完成品”じゃなくていい?─シリーズ総まとめ:あいまいさを味方につける構造設計

はじめに

全3回でお届けしてきたブログシリーズ
「問い直せるWBSのつくり方」のまとめ編です。

これまでに扱ってきたのは、以下のような構造化の難しさとその乗り越え方でした

  • 第1部:自然言語を構造に変換する際に起こる“違和感”
  • 第2部:視点の違いによって構造の意味がズレてしまう問題

どちらも、WBSを「正しく整えたはずなのに、伝わらない/噛み合わない」という現場感覚に根ざした課題です。

そして今回の第3部では、それらを踏まえて、
WBSを“動ける構造”にするための最後の視点をお届けします。

それは、

“未定”や“あいまいなもの”を、構造の中に排除せず仮置きする

という柔らかい設計の考え方です。

本記事の立ち位置:3ステップの総仕上げ

これまでご紹介してきたのは

  1. 自然言語のズレに気づき、それを問いに変える(違和感に気づく)
  2. 視点のズレを見える化し、構造に反映する(意味の揃え直し)

という2つのステップでした。

これらを踏まえたうえで、第3ステップでは、
「あいまいなままでも置いておける構造」へと整地化していく段階です。

📘 この第3部に対応するホワイトペーパーでは、

仮置き設計の5ステップ、あいまいラベルの使い方、構造レビューのチェックリストなど、
現場で使えるテンプレートを多数収録しています。

👉 ダウンロードはこちら →

1. 整った構造に潜む“扱いづらさ”

「やることを全部書いた」「順番も粒度も揃えた」──
そんな“よくできたWBS”に限って、現場で意外と使われなかった。

そんな経験はないでしょうか?

  • 作業は正しいのに、進まない
  • 質問や確認が多発する
  • 「これって、本当にこの通りにやるんですか?」と訊かれる

これは、構造そのものが“整いすぎて”しまったことによる副作用のひとつです。

WBSに一度「完成」の空気が漂うと、
未定なこと・あいまいなことが書きにくくなり、
やがて「変更が悪」「修正はミス」と受け取られがちになります。

でも実際のプロジェクトには、「まだ決められないこと」が山ほどある。
だからこそ、構造にはあいまいさを含む余白が必要なのです

2. あいまいなものは「排除せず仮置きする」

WBSに未確定なものを入れるのは、不安かもしれません。
ですが、それを排除してしまうほうがリスクは大きいと考えています。

たとえば

項目ステータス備考
UI改善要検討対象画面の範囲が仮
レビュー実施観点と担当者をすり合わせ中
対象の自動化検討未定実装方針と連動して再確認予定

このように「状態ラベル+補足」を組み合わせるだけで、
構造の“温度感”が共有され、メンバーが安心して読み進められます。

あいまいさを排除するのではなく、“管理されたあいまいさ”として扱う。
これがWBSを実務で「使える構造」にする第一歩です。

3. 「問い直せる構造」がWBSの完成形

“仮”で置いた構造は、いつか見直す必要があります。
そこで重要なのが、問い直せるように設計しておくことです。

  • 「再確認ポイント」の設定
  • 「レビュー対象」のフラグ
  • 「前提条件」の明記と更新履歴の残し方

これらの要素があれば、構造は閉じることなく、常にアップデートされる前提で使われるようになります。

構造とは、「すべてを整えること」ではなく、
問いを残したままでも動かせるようにすること

4. まとめ:WBSは“生き物”のように育て使い続けるもの

WBSは、完成させるためのものではなく、進めながら育てていくものです。

  • 「自然言語」のズレに気づき(第1部)
  • 「視点の違い」を整理して(第2部)
  • 「あいまいなもの」を含めて整地化する(第3部)

それでも、また違和感が生まれたら、第1ステップに戻って再設計する。

このようにWBSは、

“完成品”ではなく、“問いと変更を前提とした構造”であるべきだ

ということが、このシリーズを通じて伝えたかった私たちの結論です。

📘 より詳細な設計方法・ラベル一覧・テンプレートはホワイトペーパーで

※免責事項
本記事(または資料)の内容は、あくまで情報提供を目的としたものであり、すべての状況に当てはまるとは限りません。内容を参考にされた結果については、ご自身の判断と責任でお願いいたします。当方では、その内容をもとにした実践や対応によって生じたいかなる結果についても、責任を負いかねますことをご了承ください。