【WBSシリーズ③】WBSは“完成品”じゃなくていい?─シリーズ総まとめ:あいまいさを味方につける構造設計
はじめに
全3回でお届けしてきたブログシリーズ
「問い直せるWBSのつくり方」のまとめ編です。
これまでに扱ってきたのは、以下のような構造化の難しさとその乗り越え方でした
- 第1部:自然言語を構造に変換する際に起こる“違和感”
- 第2部:視点の違いによって構造の意味がズレてしまう問題
どちらも、WBSを「正しく整えたはずなのに、伝わらない/噛み合わない」という現場感覚に根ざした課題です。
そして今回の第3部では、それらを踏まえて、
WBSを“動ける構造”にするための最後の視点をお届けします。
それは、
“未定”や“あいまいなもの”を、構造の中に排除せず仮置きする
という柔らかい設計の考え方です。
本記事の立ち位置:3ステップの総仕上げ
これまでご紹介してきたのは
- 自然言語のズレに気づき、それを問いに変える(違和感に気づく)
- 視点のズレを見える化し、構造に反映する(意味の揃え直し)
という2つのステップでした。
これらを踏まえたうえで、第3ステップでは、
「あいまいなままでも置いておける構造」へと整地化していく段階です。
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「やることを全部書いた」「順番も粒度も揃えた」──
そんな“よくできたWBS”に限って、現場で意外と使われなかった。
そんな経験はないでしょうか?
- 作業は正しいのに、進まない
- 質問や確認が多発する
- 「これって、本当にこの通りにやるんですか?」と訊かれる
これは、構造そのものが“整いすぎて”しまったことによる副作用のひとつです。
WBSに一度「完成」の空気が漂うと、
未定なこと・あいまいなことが書きにくくなり、
やがて「変更が悪」「修正はミス」と受け取られがちになります。
でも実際のプロジェクトには、「まだ決められないこと」が山ほどある。
だからこそ、構造にはあいまいさを含む余白が必要なのです
WBSに未確定なものを入れるのは、不安かもしれません。
ですが、それを排除してしまうほうがリスクは大きいと考えています。
たとえば
項目 | ステータス | 備考 |
---|---|---|
UI改善 | 要検討 | 対象画面の範囲が仮 |
レビュー実施 | 仮 | 観点と担当者をすり合わせ中 |
対象の自動化検討 | 未定 | 実装方針と連動して再確認予定 |
このように「状態ラベル+補足」を組み合わせるだけで、
構造の“温度感”が共有され、メンバーが安心して読み進められます。
あいまいさを排除するのではなく、“管理されたあいまいさ”として扱う。
これがWBSを実務で「使える構造」にする第一歩です。
“仮”で置いた構造は、いつか見直す必要があります。
そこで重要なのが、問い直せるように設計しておくことです。
- 「再確認ポイント」の設定
- 「レビュー対象」のフラグ
- 「前提条件」の明記と更新履歴の残し方
これらの要素があれば、構造は閉じることなく、常にアップデートされる前提で使われるようになります。
構造とは、「すべてを整えること」ではなく、
問いを残したままでも動かせるようにすること。
4. まとめ:WBSは“生き物”のように育て使い続けるもの
WBSは、完成させるためのものではなく、進めながら育てていくものです。
- 「自然言語」のズレに気づき(第1部)
- 「視点の違い」を整理して(第2部)
- 「あいまいなもの」を含めて整地化する(第3部)
それでも、また違和感が生まれたら、第1ステップに戻って再設計する。
このようにWBSは、
“完成品”ではなく、“問いと変更を前提とした構造”であるべきだ
ということが、このシリーズを通じて伝えたかった私たちの結論です。
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